エネルギー・気候 ~気候変動を緩和する~
気候変動は国際社会の最重要課題の一つです。ヤマトグループは、「気候・エネルギー」を重要課題(マテリアリティ)の一つと特定し、環境方針のもと気候変動に対する取り組みを強化しています。2050年温室効果ガス(GHG)自社排出実質ゼロおよび、2030年GHG自社排出48%削減(2020年度比)の達成に向けた主要施策として、2030年までにEV23,500台導入、太陽発電設備810基導入、ドライアイス使用量ゼロの運用構築、再生可能エネルギー由来電力使用率を70%まで向上、などの取り組みを推進します。
気候変動に対する考え方
ヤマトグループは、気候変動が持続可能な社会の実現とヤマトグループにとって重要な課題であることを認識し、気候に関わるリスクや機会、その影響を把握・評価しています。また、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD*)の提言を基にした情報開示に努めています。ヤマトグループは、事業を通して気候変動の緩和と適応を図り、リスクを管理し、機会を創出することで低炭素社会の実現に貢献し、社会とともに成長する企業を目指します。
- *金融安定理事会(FSB)により2015年に設置され、気候関連の財務情報開示に関する勧告を2017年に提示している
気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に基づく開示は、「TCFD提言への対応」をご参照ください。
目標と実績
中長期目標
長期目標:2050年GHG自社排出実質ゼロ*
中期目標:2030年GHG自社排出量48%削減*(2020年度比)
- *自社排出(Scope1とScope2)
中長期目標の詳細は、「2050年温室効果ガス排出実質ゼロに向け2030年の削減目標を具体化」をご参照ください。
各年目標
2024年~2026年 目標
2021年~2023年 目標
2023年 目標と実績
マテリアリティ | 2023年度目標 | 2023年度実績 | ||
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エネルギー・気候 | ||||
気候変動を緩和する | GHG排出量 2020年度比10%削減*1 | GHG排出量 2020年度比11%削減 | ||
GHG排出原単位 2020年度比10%削減*1*2 | GHG排出原単位 2020年度比8%削減 | |||
再生可能エネルギー由来電力40%使用*3 | 再生可能エネルギー由来電力37%使用 | |||
海外連結子会社のGHG排出量2022年度比3%削減*4 | 海外連結子会社のGHG排出量2022年度比3%削減 | |||
低炭素輸送/事業所: 低炭素技術導入、運用効率化 |
他業種と共同でEVやFCVに関する実証試験の継続(長距離用中型トラック含む) | 羽田クロノゲート・群馬ベース間において、FC大型トラック走行実証を開始 | ||
低炭素や大気汚染防止を目指した自動モビリティ*5の調査・共同研究 | パートナーと自動モビリティについて協議・技術の確認を継続実施 | |||
輸送物冷却用ドライアイスの削減:機械式コールドボックス13,000本・保冷車1,200台へ代替 | 蓄冷剤の補充購入および投入冷媒量の適正化を実施 貨物輸送トラック1,262台を保冷車へ代替 |
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EV導入1,500台 | EV導入1,754台 | |||
デジタル技術を駆使した運行状況の可視化とデータに基づく輸送の高効率化、エコドライブ促進 | 車両1台あたりのボックス積載本数2020年度比2.3本増加 | |||
モーダルシフトの推進 (鉄道・海運での輸送180台) |
拠点集約および荷物仕分け粒度変更による積載率向上 年間横持ち輸送台数2020年度比72,308台削減 |
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100%再生可能エネルギー由来電力を使用したモデル営業所の実証試験 | 100%再生可能エネルギー由来電力の使用に向けてモデル営業所の実証を継続 | |||
タッチポイント(拠点)の集約・LED導入 | タッチポイント(拠点)を集約 411拠点にLED導入 |
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計測とエネルギーマネジメントの最適化 | エネルギーマネジメントの強化 | EV運用オペレーションの最適化、充電電力平準化、拠点間電力融通に関するシステム構築を開始 | ||
財務分析と低炭素投資促進 | シナリオ分析、財務計画への反映 (次期中期計画への反映) |
2023年度ヤマト運輸を対象に物理的リスクとして、洪水による収益の減少や施設・設備の被害による財務影響分析を追加実施 | ||
インターナルカーボンプライシング(ICP)の運用と効果確認、投資指標への活用検討 | ICPの適用範囲や運用方法の検討 |
- 表の全体はスクロールバーを操作して確認してください
*1 日本国内連結および(株)スワンの自社排出(Scope1とScope2)
*2 tCO2e/営業収益1億円
*3 日本国内連結および(株)スワン
*4 海外連結子会社 Scope1とScope2
*5 自動運転や隊列走行等の自動モビリティ
その他の目標は、「サステナビリティ戦略・目標と実績」をご参照ください。
気候変動緩和の取り組み
EV・環境対応車両の導入推進
ヤマトグループは、2030年までには電気自動車(EV)23,500台の導入を目指しています。
これまでも、輸送方法や距離に合わせた環境対応車両への入れ替え対応を積極的に推進しています。
2023年度末時点で、EVは2,275台、環境配慮車両(LPG車、CNG車(天然ガス)、ハイブリッド車)は36,002台、電動アシスト自転車3,606台を保有しており、既にヤマト運輸(株)の集配車両うち84%が環境配慮車となっています。
都市部における近距離輸送では電動アシスト自転車や台車などを使用することで、GHG排出量を抑えています。
中距離の輸送では、小型商用BEVトラック*1導入を2022年8月に開始しました。ヤマト運輸(株)として初めての2tトラックのEV*2導入は、2023年9月に開始しています。また、2023年11月から交換式バッテリーを用いた軽EV*3の集配業務における実証を開始しました。日中に太陽光で発電した再生可能エネルギー由来電力を充電した交換式バッテリーを使用することで、より効率的なエネルギーマネジメントを実現します。
長距離輸送は、GHG排出量削減が技術的に困難*4と言われていますが、課題解決に向けて挑戦しています。ヤマト運輸(株)はサプライヤーや他社*5と燃料電池大型トラックの実証を2023年5月から開始しました。
輸送事業者としてエネルギー効率の高い輸送機器やGHG排出量の少ない車両を利用することで、当グループだけでなく、社会の低炭素技術への移行も後押しできると考えています。
- *1日野自動車(株)が開発した「日野デュトロZEV」
- *2三菱ふそうトラック・バス(株)が開発した電気小型トラック「eCanter」新型モデル
- *3本田技研工業(株)が開発した「MEV-VAN Concept」
- *4IEA「Energy Technology Perspective 2020」
- *5トヨタ自動車(株)、日野自動車(株)、アサヒグループホールディングス(株)、NEXT Logistics Japan(株)、西濃運輸(株)
車両タイプ | 特徴 | 導入状況 |
---|---|---|
小型商用BEVトラック |
・超低床・ウォークスルータイプの小型BEV ・運転席から荷室への移動や乗降がしやすい ・普通免許での運転が可能 |
約860台導入 (2024年3月時点) |
電気小型トラック |
・2トントラックタイプのEV ・積載量がありながらコンパクトで小回りが利く ・常温・冷蔵・冷凍の3温度帯に対応 ・メーカー様にてカートリッジ式モデルも開発中 |
約900台導入 (2024年3月時点) |
交換式バッテリー軽EV |
・交換式バッテリーで走行する軽商用EV ・自社のみならず、パートナー企業のGHG排出量削減に向けて運用を検証していく |
2023年 11月 実証実験開始 |
燃料電池大型トラック |
・水素を燃料とする燃料電池大型トラック ・トヨタ自動車株式会社と日野自動車株式会社が共同で開発 ・航続可能距離 約600km ・大型トラックは十分な航続距離と積載量、短時間での燃料供給が求められるため、エネルギー密度の高い水素を燃料とする燃料電池システムの有効性の検証を進める |
2023年5月17日 幹線輸送実証実験開始(羽田クロノゲートベース~群馬ベース間) |
再生可能エネルギーの利用
ヤマトグループは、再生可能エネルギー由来電力使用率を2030年に70%まで向上することを目指しています。2023年度は、再生可能エネルギー由来電力の購入211,105MWh、自社の太陽光発電設備から1,263MWh、PPA*1で1,994MWhを利用しました。結果、電力に占める再生可能エネルギー由来電力使用は、2022年度の21.8%から2023年度37.3%に向上しました*2。
- *1PPA: Power Purchase Agreement(電力販売契約)
- *2対象範囲は日本国内連結会社および(株)スワン
低炭素技術導入と輸送効率の向上
ヤマトグループは、輸送や事業拠点において積極的に低炭素技術を導入(調達)しています。サプライヤーと連携して開発した小型モバイル冷凍機*1はその一例で、冷蔵・冷凍宅配で使用するドライアイス(CO2)を削減することができます。さらに、物流拠点の照明をLEDに転換し、省エネルギーを推進しています。また、トラックよりも長距離輸送力があり、環境負荷が小さいフェリー*2や鉄道を活用したモーダルシフトに加え、非効率便の削減、共同輸送にも取り組み、輸送効率の向上を図っています。
- *1株式会社デンソーと開発した「D-mobico」
- *2SHKライングループ傘下の東京九州フェリー株式会社と2021年7月から関東―九州間の海上輸送を活用したモーダルシフトを開始
低炭素な商品/サービスの拡充
ヤマトグループは、お客様の利便性向上と再配達抑制・GHG排出量削減を両立する低炭素な商品やサービスの拡充を進めています。詳細は、「環境商品/サービスの提供」をご参照ください。
ヤマト運輸(株)は、2024年1月に「宅急便」「宅急便コンパクト」「EAZY」の宅配便3商品について、カーボンニュートラリティ宣言を行いました。本宣言は、2022年度(2022年4月~2023年3月)において国際規格ISO 14068-1:2023*1に準拠したカーボンニュートラリティ*2を達成し、引き続きEVや太陽光発電設備の導入など、事業活動に伴うGHG自社排出量の削減に取り組むことで、2050年度までの宅配便3商品のカーボンニュートラリティの実現をコミットメントしたものです。なお、2022年度の未削減排出量*3分についてはカーボンクレジット*4使用によるオフセット*5を実施しました。2022年度のGHG排出量削減内容および2050年度までのGHG排出量の削減、除去、オフセットを含めたカーボンニュートラリティ維持のための計画を具体的に示した「カーボンニュートラリティレポート」を公開しています。 また、本宣言については、第三者機関であるBSIグループジャパン株式会社の検証を受け、宅配便3商品がISO 14068-1:2023に準拠したカーボンニュートラリティ*3であることの意見書を取得しています。
本宣言の詳細は、「カーボンニュートラル配送 宅急便」をご参照ください。
- *1カーボンニュートラリティを達成・実証するための原則・要求事項を規定した国際規格
- *2特定の期間においてGHG排出量が削減されたのち、GHG排出量がゼロ以上の場合はオフセットにより埋め合わせされている状態
- *3GHG排出削減の取り組みをした後に残るGHG排出量のこと
- *4GHG排出削減またはGHG除去による排出量相当分を取引できるようにした証書
- *5カーボンクレジットを使用することでGHG排出量を埋め合わせすること
パートナーとの協働
ヤマトグループは、共同輸送などのパートナーと協働したグリーン物流を推進し、業界全体の輸送効率化と燃料使用の低減に貢献しています。詳細は、「パートナーと協働したグリーン物流」をご参照ください。
気候変動への適応
ヤマトグループは、激甚化が進む自然災害に対して対策を強化し、レジリエンスを高めています。詳細は、「気候変動への適応」をご参照ください。
パフォーマンスデータ
温室効果ガス(GHG)排出
ヤマトグループの2023年度のGHG排出量は、燃料使用などによる直接排出(Scope1)が約656,732tCO2 、購入した電気・熱の使用に伴う間接排出(Scope2)が約166,350tCO2でした。把握している温室効果ガス排出量の内、22%がScope1、5%がScope2となります。その他の間接排出であるScope3は、約2,218,292tCO2で全体の73%でした。
エネルギー(再生可能エネルギー由来電力含む)やGHG排出量の詳細は、「環境データ」をご覧ください。
Scope3*の排出 (2023年度)
カテゴリ | 排出量(tCO2e) | 排出比率(%) |
---|---|---|
1. 購入した製品・サービス | 1,779,105 | 80 |
2. 資本財 | 186,390 | 8 |
3. Scope1、2に含まれない燃料およびエネルギー関連活動 | 133,456 | 6 |
4. 輸送、配送(上流) | 関連性がない | - |
5. 事業から出る廃棄物 | 2,806 | 0 |
6. 出張 | 6,781 | 0 |
7. 雇用者の通勤 | 54,984 | 2 |
8. リース資産(上流) | 関連性がない | - |
小計(上流) | 2,163,523 | 98 |
9. 輸送、配送(下流) | 関連性がない | - |
10. 販売した製品の加工 | 関連性がない | - |
11. 販売した製品の使用 | 54,741 | 2 |
12. 販売した製品の廃棄 | 28 | 0 |
13. リース資産(下流) | 関連性がない | - |
14. フランチャイズ | 関連性がない | - |
15. 投資 | 関連性がない | - |
小計(下流) | 54,768 | 2 |
合計 | 2,218,292 | 100 |
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- 表の排出比率は、Scope3の内訳です
- 対象範囲や算定方法は、「算定方法・係数」をご参照ください
* Scope3は、Scope1とScope2以外の間接排出
EVなど環境配慮車両保有台数
EVなどの低炭素車両へ移行を進めており、2023年度末時点で2,275台のEVを保有しています。今後、2030年までに23,500台のEV導入を目指しています。
また、環境負荷の低い運び方として、環境配慮車や電動アシスト自転車、台車なども使用しています。2023年度末時点で環境配慮車両38,277台、電動アシスト自転車3,606台を保有しており、ヤマト運輸(株)の集配車両うち84%が環境配慮車となっています。
エネルギーや気候関連の詳細情報は、ヤマトホールディングス(株)のCDP気候変動の質問書の回答でもご参照いただけます。
気候変動の緩和の取り組み事例
事例1:再生可能エネルギー由来電力のエネルギーマネジメントを行うモデル店
ヤマト運輸(株)八幡営業所(京都府八幡市)は、2023年9月より再生可能エネルギー由来電力を活用したエネルギーマネジメントを行うモデル店として本格稼働を開始しました。
八幡営業所は、全国で初めて全車両EVで稼働する営業所です。太陽光発電設備と蓄電池を導入し、日中発電してEV充電や建屋電力の一部*を賄います。また、電力平準化システム により、夜間のEV一斉充電による電力供給ピークの偏りを緩和するなど、エネルギーマネジメントを行っています。
- *太陽光発電で賄いきれない電力分は、関西電力株式会社の「CO₂フリー電力」を購入しています。
事例2:地域と連携した取り組み
2022年7月に、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション基金事業/スマートモビリティ社会の構築」プロジェクトに採択された、ヤマト運輸(株)のグリーンデリバリーの実現に向けた案件において、群馬県内におけるEV導入・運用、エネルギーマネジメントに向けた取り組みを進めています。2023年3月末時点で群馬県内にEVを50台導入しており、県内各地において順次施策の展開を行っています。
2023年6月に締結した、ヤマト運輸(株)と群馬県の「カーボンニュートラル実現に向けた共創に関する連携協定」によって両者の連携を一層強化し、カーボンニュートラルの実現および生活者・事業者・自治体の全てにメリットがある持続可能な社会の実現を目指します。