旅客機がフレイター(貨物専用機)に生まれ変わるまで
更新日 2024年1月22日
2024年4月から、安定的な輸送力の確保やサービス品質の維持・向上を図るため、ヤマトグループでフレイターを導入し、羽田・成田空港と、新千歳・北九州・那覇空港間で運航をスタートします。この取り組みは、旅客機の役目を終えた飛行機を貨物輸送専用の機体(=フレイター)に改修するところから始まります。ぜひ、レポートをお読みください!
1. スロットイン(改修開始)
この機体は今まで旅客機でしたが、これから第二の人生をYamatoA321P2F※としてヤマトグループで活躍するために、貨物専用機へ改修されます。
※P2FはPasseanger To Freighterの略です。
2. 部品などの取り外し
貨物専用機への改修に向けて、さまざまな部品の取り外しを行います。これまでお客さまを乗せてきた客室スペースはメインデッキカーゴ(アッパーデッキ)となります。
客室内の座席、お手洗い、ギャレー(台所)、天井の荷物入れ、客室内の壁(パネル)やドアなどはすべて取り除き、断熱材などがむき出しになる状態です。
貨物専用機に改修するために必要な機体構造の補強を行うため、操縦室や客室下の貨物室も部品を取り外します。操縦室の前面にあるディスプレイやスイッチ類のついた部品もすべて取り外します。
3. ジャッキアップ(機体固定)
本格的な貨物専用機への改修は、機体構造にかかる負荷を完全に抜いて実施するため、胴体や主翼にジャッキを多数入れて、機体を支えます。
4. 機体構造の改修
いよいよ、機体構造部分の改修が始まります。これまで客室だった部分はメインデッキカーゴとして貨物を搭載するスペースになるため、フロアビーム(梁)の交換、運航乗務員用ドアの新設、メインデッキカーゴドアの新設、天井エリアの補強、エントリードアの挿入などが行われます。
メインデッキカーゴの床の梁を1本ずつ交換します。これまでの旅客機よりも重たい貨物を搭載するために必要な補強改修です。
操縦室後方から左側1番ドアのエリアの外板を切り取り、そこに運航乗務員の方が機内に出入りするためのドアを新設します。少しでも多くの貨物を運ぶことができるよう、ドアは小さく、かつ前方に位置します。ドアの周辺構造はすでに製作済みの部品を機体に取り付けます。
客室の窓も埋め込まれます。客室の窓は胴体と同じアルミ製の構造部材で塞ぎます。
5. カッティングセレモニー
機体に切り込み(カッテイング)を入れます。ここから機体構造を改修する上で重要なフェーズに入り、改修工程の一つの大きな区切りとなります。関係者が一同に介し、無事に改修完了を願うためにセレモニーを行いました。
6. 新しい部品を取り付ける作業
取り外した部品やフレイター専用の新しい部品を取り付けて、貨物専用機の仕様にしていきます。メインデッキカーゴには、新たなドアが取り付けられました。
7. ペインティング(塗装)
胴体の塗装では、「シルバーマイカ」という特別な塗料を使用します。機体はつやのある仕上がりになる予定です。塗りすぎると重量がかさみ、燃費が悪化しますが、薄すぎると外板に腐食が起きてしまうため、本当に難しい作業です。
8. 日本へ初飛来
改修を終えたフレイターがついに、2023年11月6日、改修場所であるシンガポールから日本の成田空港に到着しました。
当日のコールサイン(便名)は「FDZ007」です。機体番号は日本の許可を取得する前なので、外国籍で「F-WTAX」となります。
9. プルービングフライト
運航開始に向けて運航乗務員の訓練や機材整備、オペレーション確認などのための慣熟飛行「プルービングフライト」を行います。初回は2023年11月22日に、成田空港からスタートしました。
「プルービングフライト」は、成田空港、北九州空港、関西空港での発着で実施していきます。
2024年4月11日から、ヤマトグループの新たな輸送手段となるフレイターで、お客さまの荷物を運びます。
そして、安定的な輸送力の確保やサービス品質の維持・向上を図り、持続的、かつ強靭な物流ネットワークの構築を目指します。
将来的には、輸送力の拡充や時間距離の大幅な短縮によって、特に地方での製造業企業の誘致や生鮮品の流通拡大など地方経済の活性化(地方創生)に寄与します。
“Freighter conversion and photo provided by EFW Elbe Flugzeugwerke GmbH”