運輸安全
運輸安全マネジメント
2006年10月、貨物自動車運送事業法の一部が改正され、経営トップから現場までが一体となって安全管理体制を構築することを目的とした運輸安全マネジメント制度が導入されました。これにより、「輸送の安全の確保」が事業者の義務として明確化されました。ヤマトグループ各社でも法律が示す「経営トップのリーダーシップで、組織的・継続的に安全マネジメントを推進する」という考え方を重視し、安全管理規程(保有車両数が300両以上の事業者に作成と国土交通大臣への届け出が義務付けられています)および輸送の安全を確保する計画を定め、運輸安全に関する基本方針を制定して取り組みを進めています。
グループ各社の運輸安全マネジメント公表情報
推進体制
安全管理規程に基づき、各社がそれぞれの安全管理体制を構築しています。
経営トップのリーダーシップのもと、運輸安全マネジメントの実効性が高まるよう、運輸の現場と管理部門とが連携をとり、組織的なマネジメントが行える体制を整備しています。運輸安全マネジメントを実施する各社では定期的にトップマネジメントレビューを行い、実績や成果を振り返り、問題点や課題を明らかにし改善しています。
また、重大事故などの運輸に関する重要な情報については、ヤマトグループを統括するヤマトホールディングスESG戦略立案推進機能に共有される仕組みを有しており、グループ全体で輸送の安全を推進しています。
安全指導長制度
ヤマト運輸の安全戦略の基盤となるのは、1974年の導入以来、着実に当社の安全を支え続けてきた「安全指導長制度」です。
安全指導長とは安全対策の専門職で、2024年3月現在、369名が全国の各主管支店に配属されています。日々、管下の営業所を巡回しながら、法令の遵守、個人の運転レベルの向上、交通・労災事故防止の徹底に取り組んでいます。
ヤマト運輸だけでなく、他のグループ会社においても「安全指導長制度」および同様の制度を設けている会社があります。
交通安全に関する教育
ヤマトグループ各社では、定期的な安全教育の実施を通じて、社員の安全意識を強化しています。
社内免許制度
厳しい適性検査により採用されたヤマト運輸のドライバーは、入社後約1カ月にわたる安全教育などの入社時研修を受け、社内免許を取得した後、初めて実際の乗務につくことができます。その後も、入社1年後研修、安全指導長・管理者による定期的な添乗指導・路上パトロール、3年に1回の運転適性診断などを通して、安全運転に磨きをかけていきます。
ドライブレコーダー映像指導・添乗指導
ヤマト運輸の全国の主管支店では、安全指導長・管理者がドライバー一人ひとりに対し、ドライブレコーダー映像指導・添乗指導による直接安全指導を行っています。
ドライブレコーダー映像指導
ドライバーが、自身の運転を記録したドライブレコーダー映像を、指導者・管理者とともに視聴し、必要に応じてアドバイスなどを行うことで、新たな気づきを得た運転者に安全運転のための行動変容を促しています。
添乗指導
集配時に添乗し、安全運転・エコドライブをきちんと実行できているか、細部にわたって確認・指導します。
教育ツールの作成
ヤマト運輸は、安全への意識を高め、「安全第一」を実現するために、様々なツールを活用しています。安全情報を共有する安全情報誌「セーフティー・ファースト」、全ドライバーが携帯する「運転者安全手帳」、そして危険予知訓練で危険感受性を高めることができる「安全カレンダー」などがあります。
また、年に2回実施する交通事故ゼロ運動に向けた取り組みとして、集配車両のドライブレコーダー映像を使ったヒヤリハット事例集や交通安全教育映像を作成し、事故防止に努めています。
ドライバー向け各種教育実績
研修名 | 2023年度受講者数(人) |
---|---|
添乗指導 | 25,874 |
ドライブレコーダー映像による指導 | 47,522 |
e-ラーニングの実施
ヤマトマルチチャーターは、輸送の安全に関するe-ラーニングプログラムを導入しています。以下の2テーマについて毎月学ぶことで、安全意識を強化しています。
<学習テーマ>
・国土交通省告示第1366号※の一般的な指導および監督の指針(12項目)
・重大事故防止
※貨物自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導および監督の指針
安全管理施策
輸送の安全を確保するために、運輸安全マネジメントに沿った、グループ横断および各社独自の安全管理施策を講じています。
運行管理(点呼の実施)
運行管理については、道路運送法又は貨物自動車運送事業法体系において、輸送の安全の確保のため、自動車運送事業者において、営業所に運行管理者を配置し、原則として対面により点呼を行い必要な指示を与えることなどが定められています。
ヤマト運輸では、スマート点呼*を活用した体系的な申告型点呼により、顔色、呼気の臭い、応答の声の調子等でドライバーの健康状態を確認し、疲労リスク管理を徹底するとともに、アルコール検知器を使用した酒気帯びの有無を確認しています。運行管理者はドライバーの変化に気付けるよう日々コミュニケーションをとり、ヒューマンエラーによる交通事故の防止に努めています。
*従来の日常点検・点呼のアナログ管理を改め、システムを利用しながら日常点検・点呼を実施。確認漏れの防止・法定帳票の作成支援を行い、業務効率の向上・コンプライアンスの遵守を図っています。
交通事故ゼロ運動
ヤマトグループは、海外事業会社を含めたグループ全体で、春と秋に「交通事故ゼロ運動」を実施しています。ヤマト運輸は、1970年から運動を継続しています。
「交通事故ゼロ運動」では、グループ全体の重点実施事項として、「業務運転中の交通事故防止」を掲げています。車両を保有する事業会社は、重点実施事項の推進のために、事業内容に応じた運動テーマを設定し、取り組んでいます。
また、車両未保有のグループ会社は、「労働災害の防止、社員の交通事故被害防止」などを重点実施事項として掲げ、各社独自の安全対策を策定しています。
期間中は毎日、事故発生の有無をグループ全体でとりまとめ、一定の期間ごとにグループ内に現状の共有を行っています。期間終了後には、事故発生の事業会社には原因の究明や再発防止の対策について検討を要請しています。これによって、年間を通じて、グループ全体の安全意識の向上を図っています。
無事故表彰
ヤマト運輸、沖縄ヤマト運輸、ヤマトマルチチャーター、ヤマトボックスチャーターでは、安全運転を実行し、無事故を継続しているドライバーを対象に毎年、表彰と褒章をおこなっています。
このほか、ヤマト運輸では1年間無事故・無労働災害を達成した事業所を安全優良店として表彰しています。2023年度は2,279店を安全優良店として表彰しました。
各社の永年無事故表彰者数について
Gマーク(貨物自動車運送事業安全性評価事業)の取得
Gマーク(貨物自動車運送事業安全性評価事業)は、国土交通省が推進する「安全性優良事業所」の認定制度です。利用者が安全性の高い事業者を選びやすくするなどの観点から、輸送の安全の確保に積極的に取り組んでいる事業所を認定します。国が貨物自動車運送の秩序の確立のために指定した機関(全日本トラック協会)が38の評価項目を設定し、同機関内の安全性評価委員会において認定します。
ヤマトグループでは、輸送の安全向上のために、積極的にGマークの取得を進めています。
各社の認証取得状況については、ESGに関するデータ類をご覧ください。
社内ドライバーコンテスト(全国安全大会)の開催
ヤマトグループでは、プロドライバーとしての安全運転のレベルアップと、グループ全体の安全意識や運転技術の向上を目的として、「全国安全大会」を開催しています。2023年度はヤマトグループ5社の6万人以上のドライバーから選抜された36名が出場し、安全運転の技能や知識を競い合いました。
安全指導長の育成
ヤマト運輸は、安全指導長の指導力研修を実施するとともに、年2回の専門職安全指導長認定を実施しています。認定内容は、STEP1(法令)、STEP2(運転技術)、STEP3(観察力)、STEP4(指導力)について検定を実施し、安全指導長にとって必要なスキルが備わっているか判定を行っています。
認定内容 | 2023年度認定者数(人) |
---|---|
STEP1(法令) | 329 |
STEP2(運転技術) | 326 |
STEP3(観察力) | 309 |
STEP4(指導力) | 304 |
ドライブレコーダーとデジタルタコグラフを一体化した通信機能搭載の車載端末
ヤマト運輸は、従来デジタルタコグラフで収集していた速度や駐車位置情報などに加え、ドライブレコーダーで収集する走行映像やGPSアンテナから得た情報で作成する走行軌跡などの運行データを収集する一体型の車載端末を、全集配車両へ搭載しています。収集した運行データは、クラウド形態の情報基盤へ、通信回線を通じて自動かつリアルタイムに転送・蓄積します。また、ヒヤリハット体験箇所の登録の自動化や運転開始・終了設定の省力化、車載端末のソフトウェア更新の自動化も実現し、ドライバーがより安全運転に注力できるようにしています。
この車載端末で収集し、一元管理される運行データを可視化・分析することにより、安全指導長などが各ドライバーの運転特性をより具体的に把握することが可能になります。それによって、一人ひとりの運転特性に応じた、これまで以上にきめ細かい未然防止型の安全運転教育を実施しています。
安全を支える徹底した車両の保守管理
ヤマトオートワークスは、ヤマトグループの集配拠点約約3,700カ所以上をカバーし、約46,000台におよぶ車両の点検整備を担っています。日本全国に72カ所の整備工場を展開しており、そのうち30工場は車両整備システムの効率化と環境への配慮、そして社員の働きやすさを追求した最新鋭工場「スーパーワークス」となっています。
「スーパーワークス」を含む大半の整備工場は24時間365日営業であり、故障発生時の迅速な対応はもちろん、年間を通じた一括管理により、すべての車両の法定定期点検に対応しています。さらに、車両の状態をこまめに確認、情報を蓄積することによって、故障する前に整備を行う「予防整備」を実現しています。約930名の整備士のうち、整備完了車が保安基準に適合しているかを確かめる完成検査を行える自動車検査員資格者は約700名にのぼっており、整備では、中間検査と完成検査を別の整備士が行うダブルチェックによって、検査の精度を高めています。