INTERVIEW WITH
KOJIMA PRODUCTIONS
コジマプロダクション インタビュー

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物を運ぶというゲーム性のもと、
第二層、
第三層のレイヤーとして
世の中のつながりが
感じられる仕組みを入れたかったんです。

『デス・ストランディング』を制作するにあたって、ヤマトグループが運営する日本最大級の物流施設・羽田クロノゲートの見学コースをリサーチで訪れたと聞きました。物を届けるというゲーム性において、その肉付けを行っていく作業は必然かとは思いますが、実際に配達員だったり物流というものをどのようにリサーチしてゲームに落とし込んでいったのでしょうか?

松花 新しいゲームを作る際には初期の企画段階から取材は行うのですが、文献だけで情報収集してわかった気にならずに現場がどういうものかを知る必要があります。実際に物を運ぶというのはどういうことなのかをリサーチし始めた時に羽田クロノゲートの存在を知りました。小島監督はもちろん、脚本を担当するスタッフやゲームデザインを担当するスタッフたちとお邪魔したのですが、中に入ってみると、当然ですが私たちが知りえなかった配送の仕組みや歴史、ヤマトさんがどういう工夫を重ねてきたのかを垣間見ることができました。シミュレーションゲームを作るわけではないので、それをそのまま表現するということではないのですが、ではどういったポイントをゲームの中に落とし込むことで、よりリアリティのある配達人を描くことができるかというヒントは得ることができたと思います。あとはクロノゲートだけではなく、実際に私たちが普段の生活の中で配達物を受けるときに、声掛けをしていたスタッフも多かったようです。ゲームの企画内容を話すことはできないので怪しまれないように話を伺っていたようですが(笑)。

配達というリアルなお仕事を、ゲームというバーチャルなものへと落とし込んでいく。リアリティとバーチャリティの融合のさせ方が今作の肝でもありますよね。

松花 『メタルギア』のときもそうだったのですが、実際に山の中に入って、カムフラージュの服を着てモデルガンを構える。そういったものを経験した上でつくウソがあるんです。フィクションという言い方もできますが、やはりなにも知らないまま想像で組み上げたフィクションだと乖離が大きくなってしまうのです。だから今回の『デス・ストランディング』でも、実際にどのように物流が動いているのか、物を運んでいくのかを知らないままつくウソでは違いが出てくると思うんです。小さな小包ひとつでも遠い離島まで行くし、ご在宅かもわからない山の奥まで実際に届けている現場があるわけなので、その苦労や築き上げられたシステムを私たちの頭の中に落とし込んだ上で、ゲーム内でも登るのが大変な山道にハシゴを掛けたり、ロープを垂らすみたいなフィクションを作り上げることがゲームのエッセンスになったのだと思います。

『デス・ストランデイング』をプレイされた方はわかるかと思うのですが、ゲーム内で自分が道を作ったり橋を架けたりするとオンライン上でつながるほかのプレイヤーがそれを利用できたり、「いいね」しあったり、色々な仕組みで人と人とのつながりを改めて感じた人が多いと思います。ウィズコロナ、そしてブラック・ライヴス・マターといった問題など、社会の分断が進んでしまっているように見える時代に、コジマプロダクションが本作に込めた「つながり」という思いはどのようなものなのでしょうか。

松花 たとえば私たちが山を登るときに、木で組まれた階段を上ったり、山小屋で休憩したりしますよね。これは誰か先人がなにもないところで一から作り上げたものです。整備されていない山道を登るという困難を達成することは、最初は自分のためかもしれませんが、そこになにかを作る、もしくはそういう仕組みを立てる、それが次に来た人たちの役に立つということは世の中にたくさんあることなんですよね。蛇口をひねれば水が出る、スイッチを入れれば電気がつくということも、その陰には非常に多くの人たちのお仕事や善意によって成立しています。こういった社会の中で自然に行われていることはなかなか気付きにくいと思うのですが、『デス・ストランディング』をプレイする中でそれを感じられるようにしたかったのです。小島監督はそれを「ソーシャル・ストランド・システム」と名付けたのですが、物を運ぶというゲーム性のもと、第二層、第三層のレイヤーとして世の中のつながりが感じられる仕組みを入れたかったのです。社会が大きく変化していく中でこのゲームがなにかを予言していたかのように言われますが、純粋に人と人とのつながりというものを考えるポイントに来ていたはずで、それがゲームとリンクしていたのかなと私たちは思っています。

ひとつのアクションが次の人のためになるということがゲームを通じて感じることができるのはとても新鮮でした。ヤマトグループも、CSRにのっとり次世代を担う子どもたちにさまざまな取り組みを行っています。小島監督もメディアを通じて次世代のクリエイターたちにメッセージを送っていますが、社会が不寛容になっている中で人がクリエイティブであること、自分の意思で道を切り開いていくこと、また社会がそのように変化していくためにはどのようなことが必要だと思いますか?

松花 やはり相手のことを考えて感謝の気持ちを持つというのが社会の変化に必要なのではないでしょうか。『デス・ストランディング』でも、最初は自分のためだけにアイテムを設置するんですよね。でも誰かほかの人が設置してくれたハシゴを使ったときに「ありがとう」という気持ちが芽生えるんです。そして自分が次にハシゴをかけるときに、こっちにこう置いたほうがほかの人の役に立つのではないかと考えるんです。それは実はクリエイティブなアイデアでもあって、社会において誰かのためになるモノを作るのは発明に繋がったりもします。社会にはもともとそういう考えがあったように思えるのですが、もう一度そういうふうに相手のことを思ったり、感謝したりすることがゆくゆくは社会のためになって人が自分の道を切り開くチャレンジをしやすくなると思うんです。個人主義でやる人がやる、やらない人はやらないみたいな社会だと、結局のところ分断が出てきてしまいますが、多様性を認め、相手を認めて一歩先のことを考えることが社会が変わる第一歩なのではないでしょうか。

配達員の方々にメッセージをお願いします。

松花 今回”私たちは届け続ける”のテーマにあるように、ヤマトの配達員の方々は「お客様の大事な荷物を」、我々は「新しい楽しみや感動を」を届け続けるという点で目指すところに共通の使命感があります。しかしながらデジタル作品を開発する我々にとっても、その開発過程においてデジタルでは送信できない様々なものがあり、それらを届けていただける配達業者の存在は無くてはならない存在です。
外出自粛が推奨される社会になり、配送業者の社会的な意義はますます増しているなか、私たちの生活を支え、日々働いてくださっている宅配業者の皆さんの責任感、変わらぬサービス精神に心より敬意を表します。これからもご自身の健康にも留意され、頑張ってくださいませ。

応援してくださる方々にメッセージをお願いします。

松花 今回”私たちは届け続ける”のテーマにあるように、ヤマトの配達員の方々は「お客様の大事な荷物を」、我々は「新しい楽しみや感動を」を届け続けるという点で目指すところに共通の使命感があります。そうした共通の”思い”から生まれたこのコラボキャンペーンですが、外出自粛が推奨される社会になり、ますますその使命感の重要性を感じています。
こうした変化が迫られる社会に対して、”遊び”を提供する私たちにできることは何だろう?ということを考えながら、これからも皆さんに応援していただける存在であり続けられるよう、喜んでいただける作品をお届けしていければと思います。

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