小倉昌男の福祉への思い

スワンベーカリー1号店(銀座)のオープンセレモニー。 左から有富慶二(当時のヤマト運輸社長)、小倉昌男初代理事長、タカキベーカリー高木社長(1998年)

スワンベーカリー1号店(銀座)のオープンセレモニー。
左から有富慶二ヤマト運輸社長、
小倉昌男ヤマト福祉財団理事長、タカキベーカリー高木誠一社長(1998年)

障がい者の自立を支援するヤマト福祉財団が設立されたのは1993(平成5)年9月。
初代理事長小倉昌男の個人資産と社員の賛助会員による会費が設立の原資となった。
財団設立の理由を昌男は、「特別な動機があったわけではない。
ハンディキャップのある人たちになんとか手を差し伸べたい」と振り返っている。
財団の最初の取り組みは、障がいのある大学生へ返済不要の奨学金や、共同作業所への助成だった。
そこに新しい活動が加わったのは1995年の阪神・淡路大震災。
同年6月にヤマト運輸の一切の役職から退いた昌男は、被災した共同作業所に寄付をしたことがきっかけで、障がい者施設を訪れる。
そこで見たのは安い下請け仕事に励む障がい者の姿。
月給が1万円、それ以下のケースもざらだった。
1996年、昌男は、自分は福祉のプロではないが経営のことなら伝えられると、「パワーアップセミナー」(現:パワーアップフォーラム)と題し、障がい者施設の運営者を対象に「1万円からの脱却」を目指したセミナーを始めた。

スワンベーカリーで働く障がい者のスタッフ

スワンベーカリーで働く
障がい者のスタッフ

タカキベーカリー研修センターでパン作りを体験する小倉昌男(左)(1997年)

タカキベーカリー研修センターで
パン作りを体験する小倉昌男(左)(1997年)

障がい者の経済的自立支援を実践するため、1998年には「株式会社スワン」を設立。
タカキベーカリーから技術指導と冷凍パン生地の提供を受けて、東京・銀座に「スワンベーカリー」1号店をオープンする。
障がい者が健常者とともにパンをつくり接客もする店だ。
2019年現在、直営店、フランチャイズ合わせて全国に30店舗を展開している。